ー元大学病院職員である20代社会人の医療や福祉に関する備忘録ー

元大学病院職員の20代男子が医療や福祉の事を発信するブログです。

ホスピスについて詳しく解説してみる

今回の記事では、ホスピスについて解説をさせて頂きたいと思います。

ホスピスとは

ホスピスと聞くと、末期がんなどで治癒の見込みがなく、余命幾ばくもない患者が最期を過ごす安息の場...といったイメージを抱く方が多いのでは無いでしょうか。
実際に日本におけるホスピスとは、正式名称として「緩和ケア病棟」という医療機関の病床のことを指します。ホスピス専用の入院病棟の多くは病院内に併設されており、ホスピスの患者はそちらへ入院する形になります。

ホスピスの対象者

ホスピスは、悪性腫瘍とエイズ(後天性免疫不全症候群)の末期の方が対象となります。本来であればあらゆる病気の方が対象となる事が望ましいですが、厚生労働省が定めている緩和ケア病棟の対象となる患者は上記の疾病に限定されています。

ホスピスは終の住処にならない事が多い

ホスピスを理解して頂く上で、一番重要なのはホスピスは終身の施設ではない」という事です。
一般的にホスピスは最期を穏やかに迎える為の場所...といった印象をお持ちの方も多いと思いますが、ホスピスはあくまでも医療機関であり、入院期間の制約上、退院後には外来や在宅へ移行されていく方も多いのが実情です。

入院とは本来、継続的な医学的管理を要する為に病状が快復するまでの間に医療機関で加療する措置であり、病状が快復もしくは安定すれば当然退院し、必要に応じて外来診療に移行することが求められます。もちろん、在院期間中に亡くなられる方もいますが、一定期間を過ぎればいつかは退院しなければなりません。

ホスピスの平均在院日数

ホスピスの「平均在院日数」は約32日と言われています。
医療機関によって入院可能な期間は様々ですが、大凡1ヶ月経てば退院しなければならなくなるということを事前に知っておいた上でホスピスを検討すると良いと思います。

保険診療との関係

ホスピスが終の住処とならない理由には、ホスピス医療機関であり、保険診療制度の下で運用されている事が大きく関係しています。
下記で示されているように、30日以内と31日から60日以内、61日以上とでは入院料が大きく異なります。(1点=10円)


出典:
[特定非営利活動法人 日本ホスピス緩和ケア協会]

診療報酬制度上、入院期間が長期に及ぶと病院の収益が減額化する、つまり、医療機関側としては一人の患者に長期間入院してもらうよりも、1ヶ月(場合によっては2か月)以内に退院される患者に次々と入院してもらった方が全体の収入が増えるという仕組みになっています。
これは緩和ケア病棟を持つ病院に限らず、全国どこの病院も同様です。

ホスピスのメリット

第1に、身体や心のつらさを和らげる専門的な緩和ケア医療が受けられる点です。医師や看護師、薬剤師等の医療専門職から緩和ケア(症状緩和や疼痛コントロール等)、レントゲンや血液検査、輸血、点滴など全身状態を維持・緩和するために必要な検査や治療といった処置を受けられる事が大きいと思います。
また、入院費については公的医療保険が適用され、高額療養費制度によって入院費や治療費が一定額以下に抑えられます。

第2に、在宅療養支援診療所や訪問看護ステーションと連携し、退院後の準備を行える点です。退院後に、再入院が必要となった場合の体制も整っているホスピスも多いです。

ホスピスに入る為には

ホスピスへの入院には、原則として医師による病状の告知に基づく本人の希望が必要となります。

大半の緩和ケア病棟では、「抗がん治療の中止・ 終了」と「治癒困難であるという病状理解」が入院の条件となっており、最後まで治療を継続する事を希望していなかったり、患者に対して病状や予後・今後の経過についての十分な説明が行われている必要があります。

他にも、実際にホスピスへ入院するまでには待機期間がある等、利用条件について一定の制約もあります。

患者個々の病状経過や多くの治療の選択肢がある中で治療中止の判断を決断することは非常に難しいのですが、適切な時期に適切な療養場所を選択する上で「ホスピス」についてより多くの方々に知って頂ければ良いなと思います。

参考サイト:
www.hpcj.org