ー元大学病院職員である20代社会人の医療や福祉に関する備忘録ー

元大学病院職員の20代男子が医療や福祉の事を発信するブログです。

高額療養費制度の仕組みと利用方法

高額な医療費が掛かった場合

手術や高額な薬剤・治療が必要となった場合に、医療費が月々10万円を超えてしまう...極端な例を挙げると、心臓バイパス手術などといった外科手術の中には300-500万円ほどの費用が掛かる事もあります。
保険診療で治療費総額の3割(or1-2割)までの支払いで済むにしても、300万円の3割であれば90万円を医療機関に払う必要性が出てきます。

そうした負担を軽減する措置として、日本の医療保険制度では“医療費がどれだけ高くなったとしてもある一定の限度額までの支払いに抑える事ができる制度”が存在します。
今回、ご紹介させて頂くのは「高額療養費制度」という制度で、これを使う事によって一定以上を超えた分の医療費は、所得に応じた1ヶ月当たりの自己負担限度額までのお支払いで済む形になります。

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出典:全国健康保険協会

高額療養費制度を使う方法

高額療養費制度の利用方法は大きく分けて2パターンあります。

1つ目は、事前に加入する保険者に申請書類を提出し、「限度額適用認定証」を発行してもらい、それを病院を受診する際に医療機関に提示する事で、予め窓口負担額を限度額までの支払いに抑える方法です。(高額療養費の現物給付化) 。自身が、どの医療保険に加入しているかは、健康保険証の表面にてご確認下さい。申請書類はホームページでダウンロードするか、直接問い合わせて確認して頂いた上で所定の欄を記入し、窓口へ提出or郵送にてお送りすると、発行して貰えます。
限度額適応認定証は、申請した月の1日から1年間有効です。更新は自動的に行われる訳ではないので、期限が過ぎた以降も利用したい際は再度発行手続きを行う必要があります。
また、この認定証は申請受付日より前の月は利用出来ません。

2つ目は、事後的に保険者に対して「高額療養費の請求書」を既に支払った医療費分の領収書と共に提出し、後で指定口座の方へ還付(払戻し)を受ける方法です。この場合、一旦は医療機関で通常通りお支払い頂いた後に、請求する形になる為、実際に高額療養費として払戻しの給付が口座に振り込まれるのは3-4ヶ月後になります。
当制度は、2年間の時効がある為、時効が消滅していなければ過去2年間に遡って申請可能となります。

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引用元:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」

高額療養費制度の注意すべき点

ただし、以下に列挙した項目をはじめとして幾つか留意しなければならない点があります。

・暦月(月の1日から末日)の間の合計額が、自己負担上限額を超えなければ支給対象となりません。月末から入院して月を跨いだ場合などは其々の月で上限額までお支払いする必要があります。(例えば、7月16日に入院して8月15日に退院した場合は、7月分と8月分で請求される) そうした関係で高額療養費の申請書を保険者に提出する際は、1ヵ月毎に1枚必要となります。

・高額療養費の対象となる自己負担額は、受診者別、医療機関別、入院・通院別で算出されて、21,000円以上のもの(70歳以上の方は受診者別、入院・通院別で全部の自己負担額)が対象となります。その為、対象となる自己負担額を合算して、自己負担限度額を超えた部分が高額療養費として支給されます。

・保険適用される診療が対象となる為、食事代金、差額ベッド代、先進医療に掛かる費用等の保険診療外の医療費は高額療養費の支給対象とはされていません。