ー元大学病院職員である20代社会人の医療や福祉に関する備忘録ー

元大学病院職員の20代男子が医療や福祉の事を発信するブログです。

差額ベッド代金について

差額ベッド代とは

入院中の医療費の中には、公的医療保険の適用とならない(保険診療の対象外となる)為、全額自己負担しなければならない費用が存在します。そうした費用の最たる例が「差額ベッド代」です。

差額ベッドは、正式には「特別療養環境室」と呼ばれ、入院時の個室のように、医療機関において通常の病床よりも快適に過ごせる環境が整っており、プライバシー空間の確保された病室のことです。差額ベッド代の料金は医療機関が自由に設定する事ができます。

差額ベッド代を徴収できる部屋は、以下(1)~(4)の条件を全て満たすものとされています。

(1) 病室の病床数は4床以下である
(2) 病室の面積は1人当たり6.4平方メートル以上である
(3) 病床ごとのプライバシーの確保を図るための設備を備えている
(4) 個人用の私用収納設備、照明、小机等及び椅子が備えられている

病院側が実施しなければならない事

保険医療機関が患者に特別療養環境室を提供する場合、以下の事項を行わなければならないとされています。
医療機関側は、料金や設備等について丁寧に説明を行った上で、患者側から文書で同意を得る必要があります。

・分かりやすい掲示(特別療養環境室のベッド数・場所・料金)
・患者側への明確かつ懇切丁寧な説明
・患者側の同意の確認(料金等を明示した文書に患者側の署名を受ける)

差額ベッド代金を請求できない場合

特別療養環境室を利用した場合には必ず部屋代金を支払わなければならない訳ではなく、以下のような場合については患者に特別療養環境室に係る特別の料金を求めてはならないと厚生労働省が通知を出しています。

(1)同意書による同意の確認を行っていない場合(当該同意書が、室料の記載がない、患者側の署名がない等内容が不十分である場合を含む。)
(2)患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合
(例)救急患者、術後患者等であって、病状が重篤なため安静を必要とする者、又は常時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者 ・免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者 ・集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者 ・後天性免疫不全症候群の病原体に感染している患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く。) ・クロイツフェルト・ヤコブ病の患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く。)
(3)病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合
(例)MRSA等に感染している患者であって、主治医等が他の入院患者の院内感染を防止するため、実質的に患者の選択によらず入院させたと認められる者

出典:
厚生労働省通知(特別療養環境室関係 抜粋)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000128580.pdf