ー元大学病院職員である20代社会人の医療や福祉に関する備忘録ー

元大学病院職員の20代男子が医療や福祉の事を発信するブログです。

医療現場で“前にも言ったよね”は精神病む原因になるし、リスクが増えるからやめて欲しいという話

医療現場において、次世代を担う医療職を育てる上で新人教育を担当する人間が言ってはならない言葉の一つが「これ前にも教えたよね」であると考えています。

以前にとある方のツイートを拝見して、下記の内容はとても共感しました。

「前にも教えたよね」って言葉は医療の現場で絶対使ってはいけない言葉の一つ。
これを言われると、悩んだ瞬間に質問ではなくて曖昧な記憶に頼るというリスクのある行動を取るようになる。

医療現場において『前にも教えたよね』という言葉はあまり使うべきではない言葉の一つ→悩んだ瞬間、曖昧な記憶に頼るというリスクある行動を取るようになってしまう為 - Togetter

質問しにくくなる事によるリスク

「前にも教えたよね」という言葉を言われた側は、萎縮して指導者に質問するのを心理的に避けるようになってしまい、いざ判断に迷う事態が発生した際に、上の人の意見を聞けずに自分でも正しいのか分からないまま進めてしまう事で、致命的なミスへと繋がりかねないリスクを孕んでいる為、この言葉は教育担当者や新人指導者が絶対に言ってはならない禁句であると私は考えている。

基本的に質問がしにくい職場環境はマイナスにしかならないので、これを言う人間はその言葉の重大さに気付いていない可能性が大いにあります。

特に医療系の仕事は、正確な知識と情報に基づいて業務をこなさないと人の生死に関わるので、判断に迷った際に経験者に聞くことを恐れるようになる程、曖昧な知識を修正出来なくなり、現場におけるインシデントの発生リスクが高くなります。

また、この話は医療現場に限る話ではなく、他職種を含めて全ての教育者や新人指導においても同様の事が通じます。

記憶力や要領が良く理解力の高い人であれば、1回の説明を受け、内容を瞬時に理解して直ぐに実践できる方もいます。
しかしながら、物事を覚えるペースには個人差があれば、1回で完璧に覚えられなかったり、時間が経って一度覚えた事がうろ覚えになったりする場合もあります。

この様な言葉を使うタイプの方が指導担当にいると、本当に聞きたい事柄があったとしても、その人に質問どころか自分から会話もする事を避けるようになり、とにかく怒られるのが怖くて身動きできなくなります。

分からないから質問をするのに、「前にも教えたよね」は質問の答えではないですし、解決もしなくて時間の無駄で、本人も萎縮して質問しづらくなって何のメリットもありません。
基本的に教えてあげれば済む話なので、目先の忙しさや労力に囚われず、教育側は長い目で成長を見守る度量を持つ事が肝要であると感じます。

質問をしてもしなくても怒られる過程で次第に精神を病んでいく

新人の医療職員が勇気を出して質問したとしても、「前にも言ったよね」と言われると、業務で次に分からない事態に直面した時に、

・質問する→「前にも言ったよね」を再度言われて機嫌を損ねる
・質問をしない→分からないまま業務を進めて、ミスをして怒られる

となり、曖昧な記憶でやって失敗して怒られ嫌な態度取られ、怖くて聞けなくなる→仕事を進める際にやり方が分からない→ミスをする…の悪循環…で次第に精神を病んでいきます。

実際に不明点を聞きに行っても「前にも教えたよね」と言われて、前に教わった内容を記憶を頼りに思い出したり、自分なりの確認した上でやった結果本来の方法とは異なった場合には、酷く怒られるといったパターンもあり得ます。

教える側の都合

同じ質問を何回もしてはいけないという考えは本来は指導者としては失格で、何回も教えたくないという教える側の怠慢だと思う。

成長や結果を求めるなら、きちんと覚えるまで教えたり、きちんと一人で業務を行える水準まで持っていくのが教育を担当する者の責務で、質問された事に対して突き放すような言葉を返す事はは責任の放棄である。

「曖昧な時は何度も聞いていいから確実に覚えてね。」「分からないことは、何度でも聞いて大丈夫だよ。絶対怒ったりしないから、遠慮せずに聞いてね。」といった様に何回でも同じ事を聞いても良いというスタンスを指導者が持つ事で、入職してまもない新人が安心して聞けるような土壌が形成され、職場の雰囲気自体も良くなるのではないでしょうか。

ケースバイケースではありますが、答える事で完結する質問なら即答し、本人の考えや判断が必要な事柄なら、「どうしたら良いと思う?」って聞いて一緒に考えてあげたりアドバイスして、寄り添いながら1人でゴールできるようにしてあげる事も時に必要なのかなと感じます。

もちろん質問する側も、下は少ない回数で覚える努力をしたり、メモを取る事で同じ質問をなるべく繰り返さないようにするといった努力は必要なので、それぞれが本来の目的を達成する為に最善を尽くす姿勢が重要であると考えています。