ー元大学病院職員である20代社会人の医療や福祉に関する備忘録ー

元大学病院職員の20代男子が医療や福祉の事を発信するブログです。

人工妊娠中絶にかかる費用について

緊急避妊薬を薬局で購入できるように求める要望書を産婦人科医等で構成される団体が厚生労働省に提出したというニュースが報じられていますね。多くの諸外国では、処方箋なしでアフターピルを購入できるのに関わらず、日本では薬局で販売する認可が下りていない為、緊急避妊薬を簡便な方法で入手できずにいる女性が沢山存在してきた事は想像に難くありません。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200722/k10012527531000.html

妊娠するとは思ってなかった、経済的・年齢的な問題で子どもを育てられないもしくは育てていく自信がない、避妊に失敗してしまった、強姦やレイプによる被害、出生前診断などで胎児に先天的障害・染色体異常が有ることが判明した、母体に健康リスクがある...といった様々な事情によって「望まぬ妊娠」をした女性の中には人工妊娠中絶を選択される方は少なくなりません。中絶を選択される際に気になる事の一つが費用ですが、中絶手術を受けるタイミングによって、身体への負担や費用は大きく変わります。

本記事では、日本における人工妊娠中絶可能な期間や手術費用について述べていきます。

人工妊娠中絶可能な期間・同意書について

先ず、日本では、人工妊娠中絶が可能とされている期間は「妊娠22週未満(21週6日まで)」と定められています。妊娠期間は、最後の生理が始まった日(最終月経開始日)を0週0日とし、1週・2週・3週・・・と数えます。
しかしながら、妊娠週数が長くなるほど母体へのリスクも高まるので、可能な限り早めに手術を行う事が望ましいと言えます。
生理がこない、薬局の妊娠検査薬の結果で陽性が出た場合などは、中絶するか出産するか迷っていたとしても早めに病院を受診すると良いでしょう。自分が思っていた以上に妊娠が進んでいる事もあります。

また、人工妊娠中絶には配偶者もしくはパートナーの同意書が必要となります。
未成年の場合は、保護者の同意書も必要です。

人工妊娠中絶手術の料金

中絶費用にかかる料金は病院や妊娠週数によって違います。
全体にかかる金額は、手術費用以外にも妊娠確認の為の診察代、術前の超音波検査や採血検査、術後検診などの料金が必要となります。これらは通常全て自費診療となります。

なお、中絶の手術費用は、手術日当日の来院時にお支払い頂く形を取っている病院が多いです。

妊娠11週目までの妊娠初期の中絶手術と12週目以降の中期中絶手術では、それぞれ異なりますが、一般的に以下の様になります。

妊娠7-8週までの中絶手術
中絶手術は妊娠7週前後が一番安全と言われています。また、妊娠9週未満であれば、入院せずに日帰り手術が可能な病院も多いです。
(費用は約8万~9万円)

妊娠8週~11週までの中絶手術
この段階になると胎児が大きくなり、子宮口を拡げる前処置が必要になりますが、手術自体は7-8週前半までと同じく10分~30分で手術が終了します。
(費用は約10万~15万円)

中期中絶(妊娠12週0日から21週6日まで)
妊娠12週0日以上経過した場合の中絶を中期中絶と言います。
12週未満の場合とは、手術方法などが大きく異なり、一般的に入院期間も長く費用も高額となってしまいます。
また、中期中絶手術を行える医療機関の数も少なくなります。
更に役所への死産届の提出が義務付けられている上、胎児の火葬と埋葬といった諸手続きも必要となります。
限られた時間の中で中絶をするか否かを決断しなければならないのは困難だと思いますが、中期中絶は費用面・手術リスク・入院期間等のあらゆる面で負担が増えますので、中絶を考える際は12週を超えないよう考慮した方が良いでしょう。
(費用は約40〜50万円)

ただし、12週以降の人工妊娠中絶(中期中絶)では、出産育児一時金の支給対象となります。出産育児一時金は公的医療保険の制度で、42万円の支給を受ける事ができます。
直接支払い制度の場合は、制度加入の病院に42万円を上限として医療機関が本人に代わって保険者に費用請求する為、窓口での自己負担額は大きく軽減されます。
仮に一旦は自費で出産や中絶費用を支払っていた場合でも、産後2年以内であれば遡っての支給申請が可能です。

健康保険証の提示について

中絶手術そのものは、保険適用されない自費診療になりますが、手術前の診察や検査時に子宮筋腫子宮内膜症、性病などの婦人科疾患が発見された場合に、同時に治療を行う場合もあります。その際に、保険証をご持参頂いていれば、治療費用分については保険が適用できるので、念の為に保険証を提示しておく事を推奨致します。